粉々の硝子散り敷くごとき道素足で歩く心地して冬
抱かれゐて肩越しに見る冬空の深く青きを哀しと思ふ
帰リ来てまた海隔つかの地にもやがて雪降る季節となりぬ
零さじとまばたき堪え見つめたるすばるは元から潤んでをりぬ
流星はまばたきほどの儚さよ帰って来てと願ふ間もなく
（２００５年1月 タジオ逝く）
病んでなほ悲しいほどに艶やかな我が犬の毛をただ撫でてをり
玻璃越しに小鳥の弾む庭ありて死に行く犬も冬の陽を浴ぶ
行かせぬと抱きしめゐても非情なる波くろぐろとタジオを攫ふ
冬の陽に動かぬからだ撫でたれば首から尾へとひかり耀ふ
わが犬を焼く陽炎の昇りしを仰げば眩し春近き空
比企の丘わが庭とせし犬なれば今も遊ばむ風となりゐて
諦めを破り鳴り出すリフレイン可愛いタジオ何処にいるのと
天使ねと言い来しことが現実に ただそれだけのこと今だ冬
幾たびも共に来し道冬ざれて虚ろといふ名の我は歩めり
