「ビジネスで来たのか」
ホテルからヒースロー空港へ向かうタクシーの運転手が聞いた
「い〜え　観光ですよ」と答えて　
何でビジネスと思うのだろうとしばらく考えた
おそらく荷物が少なかったからかもしれない
空港などで会う日本人はあふれんばかりのお土産？
の大荷物を持った人が多いから・・

一人旅が好き 　買い物はあまりしない 　最低限の家族へのお土産と　あれば自分の好きなものを少し 　買い物をしないので香港では何もすることがなかったし 　何度パリへ行ってもブランド店には行ったこと無し 　それよりも蚤の市でもひやかしているほうがよほど楽しい 　あるいは地図も見ず　知らない裏通りを歩き回る 　あるいは下町のカフェでコーヒーを飲みながら 　店内や道ゆく人々をぼ〜っと眺めている 　そんな時　誰も知っているひとはいない　 　誰にも何にも属さない自由な自分でいられるという 　開放感が快い

けれど一人で歩いていると思いっきり道に迷ったりもする 　　その時間のロスは確かに不合理かもしれない 　　やっと探し当てた美術館で「閉館」と鼻先でドアを閉められたり・・ 　　道を聞きたくても言葉が殆どわからないのでひと苦労 　　それでも方向だけでも・・と聞いてみる 　　フランス人は意地悪だというけれどそんなこともなく 　　シャンゼリゼでたずねたおじさまは　車の中から地図を出し 　　平気で雨に濡れたボンネットに広げてさがしてくれた 　　そういう大雑把さがけっこう好きだったりする

逆に道を聞かれたことも数回 見ればわかるだろうが！　と思うけど一人だと旅行者と思わないのか 　「パルドン　マダム・・」と寄ってきたりする 「すいません　当方フランス語は話せませんっ」というフランス語が おおいに役に立つとは・・・

フランスに限らず買い物には日本よりずっと気を使う 　　接客業をしていたこともあり　「いらっしゃいませ　どうぞご覧下さい」は日本の常識 　　それが向こうでは　まず挨拶するのはこちらのほう 　　「ボンジュール　マダム　見せていただいていいですか？」という感じ 　　そう言うとたいていはにっこりしてくれるが　 　　中にはエラソーにうなずくだけの人も 　　勝手に品物にさわると嫌がられると聞いているのでそれも遠慮がちに 　　出る時も「メルシー　オーヴォワール」の挨拶を忘れずに 　　なんだなんだ　日本では横柄な客に気を使う立場で　 　　こちらでは店員に気を使うお客か！ 　　と　これには少々ストレスを感じたりして・・・

言葉はその国の挨拶程度は覚えていったほうが　楽しいコミュニュケーションを取れる気がする ローマのタクシーで行く先をイタリア語で言ってみたら「イタリア語が話せるのか？」と運転手が大喜び 「いえいえっ！残念ながら話せません　ほんの少しだけね」 運転手さんをがっかりさせちゃったけど　このイタリア語も覚えてきて良かった・・

そういえばパリには日本の観光客が多いので　 　　レストランのスタッフが日本語で話しかけてきたりする 　　ある時勉強していったフランス語で鱒の料理を注文 　　するとウエイターが日本語で「鱒ですね」と返してきた 　　「ウイ　ムッシュー」とこちらも意地でフランス語というマンガのようなやり取り 　　そんなことが楽しい思い出になっている

現地の言葉といえば・・・日本ではもちろん日本語 よく英語の勉強を始めたきっかけが　街で外国人に話しかけられて答えられず 恥ずかしい思いをしたから・・などという話を聞く でもソレって恥ずかしがらなければならないことだろうか アジアの国々の中で　わが国の英語の学力が低いという問題は別にして 普通に暮らしていれば英語の必要は殆ど無いのだから　喋れなくて当然のこと 「私は英語が話せません」などと恥じ入る必要はなく 「英語は話しませんので」とつらっとしていていいのでは・・？

閑話休題 　　失敗も数しれずある 　　ドーヴィルのレストランでムール貝の酒蒸しを食べた 　　ハンサムなウエイターがにっこり笑って何か言いながらお皿をさげようとするので 　　（お下げしていいですか）と言ったんだなとこちらもにっこりしてうなずいた 　　しばらくすると彼はくだんのお皿に　またムール貝を山盛にして持ってくるではないか 　　お替りはいかがですかと言ったのだ　と気づいてもあとの祭り 　　ええ　そんなことはおくびにも出さず食べましたよ！ 　　ムール貝一生分・・

でも食事といえば・・
朝や昼はひとりでもいっこうにかまわないのだが
夕食となるととたんにわびしくなる
第一ワインを飲んで美味しい料理を食べて・・にひとりでは格好がつかない
かといって夕食にファーストフードはいやだし
同じ時刻にやはりひとりさびしく食事をとっている旅行者もいるんだろうな
夕食だけ一緒に食べられたらいいのに・・と思うけれど
そううまく現地調達　というわけにもいかず
この時ばかりは料理と一緒に孤独をかみしめることになる

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