電車に乗って
窓から移り変わる景色を眺めている
そんな風に 何十年も過ぎてゆく
ぼんやり外を眺めていると
春には桜の並木が見える
夏には湧き上がる白い雲
水田も麦畑も 森も丘も草原も
心穏やかに そんな景色の移り変わりを眺める
時々隣に誰かが乗り合わせる
時には話が弾んで別れ難くても そのうち皆降りてゆく
うとうとして気がつくと 誰もいなかったりする
ふっといなくなった カムパネルラのように
いつのころから それにすっかり慣れてしまった
ではごめんくださいませ さようなら お元気で
またどこかでお会いしましょう
二度と会えないのは知っていても
そしてまた一人になって 窓の外を眺め続ける
いつか降りるところはわかっている
小さな駅 ホームの向こうはすぐ海で
ちっとも暑くはなく 爽やかな風が吹いている
まばゆいばかりの陽光が何もかもを白くして
でも海だけが青い
ホームに降りて 深呼吸して
海に向かって歩き出す
この世のものはすべてが美しく
降りそそぐ太陽の光がどんなに愛しいものか
それを感謝しながら 蒸発していく私
輪郭だけになった私は
最後に振り返って
あなたに向かって 手を振る
